今回は菌活に最適な微生物についてのお話です。
4月に突入して、だんだん暖かくなってきました。なんだか眠くなってき….ちゃ….い….ますが、今日も元気に発酵食品について学んでいきましょう!
さて、第3回目は菌(微生物)のお勉強です。最近は「菌活」という言葉も認知されてきて、実際に取り組んでいる方も増えてきました。
菌活とは菌で作られた食品を積極的に取り入れる活動のこと。菌活を行うことで、腸内環境を整えることができるなどの様々な効果が期待できるんです。
皆さん、菌は好きですか?
私は大好きです。高校生の頃に「もやしもん」という微生物の漫画に出会い、その影響で大学でも微生物工学を専攻しました。
「菌が大好き=変人」だというイメージを持たれてしまうので、周囲に言えずに菌に対する愛をひっそりと育てていました…
そこで、本日は
・3大微生物=カビ・酵母・細菌
・発酵食品に欠かせない5つの微生物
この2つについてお話したいと思います!
目次(押すとジャンプします)
そもそも微生物とはなに?
発酵という現象は、微生物のはたらきによって起こります。
前回のおさらいをすると、
発酵はカビ・酵母・細菌などの微生物が、有機化合物を分解するときに生まれる「人間にとって有益な物質」を作ること
でしたね。
前回の記事はこちら
発酵と腐敗は人の好みで決めている?発酵スペシャリストへの道【2】
微生物とは、肉眼で見えないほどの小さな生き物を総称した呼び方。自然界には多種多様な微生物が生息していますが、その中で発酵食品に関わる微生物は主に3種類です。
その微生物は
・カビ
・酵母
・細菌
この3種類!名前は聞いた事があるかと思います。
発酵食品の中には、カビや酵母など複数の微生物が発酵に関わっている食品も存在します。
例えば、味噌!味噌は様々な微生物の力によって、深く複雑な味わいを生み出しているんですよ~
菌活に欠かせない5つの微生物
たくさん種類がいる微生物の中でも、発酵食品に欠かせない5つの微生物をご紹介します。
日本の発酵文化を支えてきた「麹菌」
麹菌(こうじきん)は、麹(こうじ)をつくるために作られるカビの総称です。一般的に、コウジカビと呼ばれています。
【麹菌にとって生みだされる発酵食品)
・味噌
・醬油
・日本酒
・甘酒
・麹漬け など
麹は「米や麦などの穀物に麹菌を繁殖させた」もので、麹は発酵食品を作る上で欠かせない存在です。
日本における麹菌の歴史は古く、弥生時代にはすでに使用されていました。
現在、発酵食品に使われている麹菌は自然界に存在しているものではなく、日本人が長い年月をかけて品種改良を行い生み出したものがほとんどです。
カビを使った発酵食品は東南アジアなどにもありますが、麹菌を使った発酵食品は日本以外にはほぼ存在しません。
死んだ後も活躍!有益菌の代表「乳酸菌」
乳酸菌(にゅうさんきん)は、乳糖やブドウ糖などの糖類を分解して乳酸を生産する細菌の総称です。
種類はたくさんあり、空気中や海中、そして生き物の腸内など色んな場所に生息しています。
【乳酸菌が生み出す発酵食品】
・ヨーグルト
・チーズ
・ぬか漬け など
乳酸菌によって作られる発酵食品の独特な酸味は、乳酸がもとになっているんですよ!
ヨーグルトやチーズ以外にも、味噌や醤油を作る際にも乳酸菌が大きな役割を果たしています。
乳酸菌が乳酸を作り出すことで、
・食品の風味が良くなる
・腐敗菌が生息しにくい環境を作る
などのメリットが生まれます。
また、乳酸菌は腸内環境をよくする「善玉菌」として注目を浴びていますよね。現在、乳酸菌を腸まで届ける方法や腸内で乳酸菌を定着させる研究が進められています。
ちなみに、乳酸菌は死んだ菌であっても腸内環境のバランスを整える働きがあるのだとか!
アルコールからお酢を生み出す職人「酢酸菌」
酢酸菌(さくさんきん)は、アルコールを発酵させて酢酸を作る細菌です。
細菌は一般的に酸素がない状況で活動を行いますが、酢酸菌は好気性細菌なので酸素を必要とします。
【酢酸菌が生み出す発酵食品】
・酢
・ナタデココ など
酢酸菌が生み出す発酵食品といえば、なんといってもお酢。酢は酢酸菌の働きによって、アルコールを酢酸発酵させて作ります。
1993年に一大ブームを巻き起こしたナタデココは、れっきとしたフィリピン発祥の発酵食品です。正式名称は「ナタ・デ・ココ」。
ナタデココはココナッツ果汁を酢酸菌の一種が発酵させて作られたもの。酢酸菌の働きにより「微生物セルロース」と呼ばれる食物繊維が合成され、ココナッツ果汁の表面が固まります。
このセルロース部分を食用にしたものがナタデココです。
生命力の強さはピカイチ「納豆菌」
納豆菌(なっとうきん)は枯草菌と呼ばれる細菌の一種で、名前の通り納豆を作ります。
枯草菌は、枯れた草や土の中に生息しています。稲わら1本に約1000万個の納豆菌が付着しています。
納豆菌の培養は人工培養が主流になっていますが、それ以前は蒸した大豆を稲わらに入れて自然の力で発酵させて納豆を作っていました。
納豆菌は熱にも酸にも強い菌
芽胞とよばれる耐熱性が強い細胞構造で出来ています。100度で煮沸しても、酸が強い胃酸を浴びても死滅することはありません。
そのため、納豆菌は生きたまま腸に届くんです!納豆菌によって作られた納豆は、優れたプロバイオティクス食品だといえます。
プロバイオティクスとは、
人間や動物の身体に良い働きをする生きた微生物
のこと。
先ほど紹介した乳酸菌やビフィズス菌などもプロバイオティクスに含まれます。
パンならお任せ!香りのファンタジスタ酵母菌
酵母菌(こうぼきん)は空気中や土壌、植物など色んな所に生息する微生物です。
酵母菌は糖に作用してアルコール発酵を行い、アルコールと二酸化炭素を作り出します。ビールやワインなどの酒類の醸造だけでなく、味噌やパンなどでも重要な役割をはたしているんですよ♪
酵母菌は発酵する過程で様々な香りの成分を生み出します。発酵食品特有の香りは、この酵母菌が作り出しているんですよ~!
【酵母菌によって生み出される発酵食品】
・ビール
・ワイン
・パンなど
パン業界では、酵母のことをイーストと呼ぶのが一般的です。パンを作る時には、生地を膨らませるためにイーストが作り出す炭酸ガス(二酸化炭素)を使用しています。
近年は健康志向の高まりにより、天然酵母のパンが人気ですよね。そのため、人工的に培養するイーストは危険だというイメージを持つ方もいらっしゃいます…
しかしながら、イーストは元々「自然界に存在する酵母の中からパン作りに最適な菌」のみを集めて培養したものです!
菌活についてのまとめ
今回は、菌活に欠かせない5つの微生物をご紹介しました。
発酵食品は微生物の力でより美味しく、健康づくりにも役立つ食品が作られています。
発酵食品を積極的に食べて、菌活を行いたいですね!次回は、「日本の食文化と発酵食品について」勉強したいと思います!